開発の理念
2018.03.02
日本初の大規模都市計画であった千里ニュータウンは、その後の日本のニュータウン開発に大きな影響を与えました。計画には日本の英知が集められ、欧米のニュータウンの先進事例が参考にされたということです。
日本第1号の大規模ニュータウン
大阪府北部の千里丘陵に広がる千里ニュータウンは、日本のニュータウン第1号。吹田市・豊中市の2 つの市域をまたぐ面積は約1,160ヘクタールで、阪神甲子園球場の約300倍の広さにあたります。1955年頃に急激な経済成長・工業化が進んだ日本では、大都市に人口が集中して住宅不足が深刻化するという現象が起きていました。そこで大阪府は、100万戸を超える住宅を建設する方針を決定。その重点施策として、安くて良質な住宅と宅地を大量に供給し、良好な居住環境を整備するために千里ニュータウンの開発事業が1960年に着手されました。住戸3万戸・住民15万人を包括するニュータウンの建設は、日本だけでなく海外でも例のない大事業となり、日本を代表する大学や研究機関が調査研究や計画立案に参画するなど、千里ニュータウンの開発はまさに国家プロジェクトとなりました。
新住宅市街地開発法を初めて適用
1963年に制定された新住法「新住宅市街地開発法」を初めて適用した千里ニュータウンの開発は、その後の日本のニュータウン開発に大きく影響を与えました。開発は、20世紀のニュータウン建設を支えた理念のひとつである「近隣住区理論」に基づいて進行。ニュータウン全体を南・北・中央の3区にわけ、幹線道路で区切った12の小学校ごとに住区をつくり、教育・公共・商業・医療施設などを計画的に配置。また、集合住宅を住区の中心に、戸建住宅をその周辺に配置して都市景観を演出しました。戸建住宅・集合住宅・社宅など、あらゆる種類の住宅を設けたことで、多様な人々によるコミュニティが形成されたのです。
総面積の約21％を公園や緑地に
また、千里ニュータウンの特長としてあげられるのが、総面積の約21％を占める公園や緑地の存在です。環境を守るためにニュータウン全体を周辺緑地で囲み、地区ごと、住区ごとに公園を配置。これらの面積はほかのニュータウンと比べて大変広く、緑豊かなすばらしい景観を生みだしています。高度経済成長期に完成した千里ニュータウンには、若い核家族がこぞって入居し、同時期に開催された大阪万博をきっかけに世界的にも有名になりました。大阪大学吹田キャンパス、国立民族学博物館、万博記念公園のオープンなど、まさに高度経済成長とともに夢のような街ができあがっていきました。
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千里ニュータウンの現在
街びらきから55年以上が経過し、さまざまな課題がみられるようになった千里ニュータウンですが、建て替えやマンションの建設が進み、人口はわずかながら増加傾向。地域一体となって新しいまちづくりに取り組んでいます。